前回までのおさらい
松本ブロッコです。
今回は「届出」と「指定数量」についてのお話です。
前回は「申請」の中の「認可」についてお話しました。
(前回はコチラ)
軽くおさらいしましょう。
「認可」については「予防規定のみ」でしたね。
内容としては多くありませんでした。
そして。
前回の「認可」のお話で。
「申請」についてのお話は終了しました。
「手続き」には大きく「申請」と「届出」があるということをお話しましたが。
覚えているでしょうか?
その違いは何でしたか?

そうこれでしたね。
「申請」は相手の「返答がいる」事案。
これに対し。
「届出」は相手の「返答がいらない」事案。
でしたね。
その理由として。
「申請」に対し、「届出」は「重要度が低い」(危険度が低い)事案
ということもお話しました。
そして。
この重要度を決めるのは。
- 火災を起こさない
- もし火災を起こしたとしても被害を最小限にする
と、こちらも何度もお話してきました。
そのため。
今回お話する「届出」。
書類を出したらそれで終わり。
こういった事案になります。
ただし。
これからお話する「届出」は。
重要度が低いけど、火災予防の観点からはキチンとしないとダメですよね。
という「手続き」です。
(重要度が低いから「適当でいいや」とはならない事案です)
そのため、「届出先」はすべて「市町村長等」になります。
(「消防関係者」に知らせないといけないくらい重要度が高ければ「届出」ではなく「申請」扱いになるでしょうから)
- 「届出」の「届出先」はすべて「市町村長等」
ちなみに。
今回お話する「届出」を一覧にするとこうなります。

ここからは表の事案について1つ1つ見ていきましょう。
⑩危険物の品名、数量または指定数量の倍数の変更
→今、取扱っている危険物の内容(種類や量など)を変更する場合です。
今取り扱っている、危険物の種類や量を変更する……
一見すると、危険度が高いと思うかもしれません。
以前にお話しした、「承認」にあった「仮使用」の場合。
危険物を扱っている部屋(場所)を変えるだけで「申請」(「返答が必要」な事案)になってました。
今回の場合はどうでしょう?
取扱っている量を変更する……
もちろん火災の観点からしたら。
危険物の量をたくさん扱えば扱うほどリスクは大きくなります。
それでは。
逆に聞きますが。
「たくさんの量を扱うのが危険」
だから。
「相手の返答によって、量を制限するかどうかを決める」ということが正しいのか?
ということです。
いや。もちろん不法であればダメですよ。
例えば。
1,000ℓしか入らないタンクに量を増やして5,000ℓを扱おうとしたり。
貯蔵している部屋からあふれるほどの量を扱おうとしたり。
こんなのは、もちろんダメです。
そうではなく。
キチンとした制限や規制の範囲内での量をふやす
といった場合のことです。
製造所等を運営しているのは企業です。
その企業は危険物を取り扱うことで利益を出しています。
「リスクが高い」という理由だけで。
「量を制限する」ということは、その企業の生産活動を制限するということです。
例えば、スーパーマーケットで考えてみましょう。
あるスーパーマーケットが利益をあげるため、食料品売場を拡張することにしました。
そこでこれまで扱っていた衣料品の扱いを止めて、衣料品のスペースを食料品売場にしました。
(内容が食料品と危険物という違いやスペースを変更するという違いはありますが。)
法的にキチンと基準を満たした建物を建てて、法的に問題のない危険物の扱いや運営をして利益をあげる。
企業運営としてはまったく問題がありませんよね?
その企業が何らかの理由で「扱っている危険物の内容(種類や量など)を変更する」となった場合。
公的な機関である市町村や国が企業活動を止めることはできません。
また利益を拡大するため。
法を犯しているわけではないのに。
「申請」をして「相手から許可、承認、認可などの同意を得る」というのもおかしな話です。
キチンと法に乗っ取った操業を行っているならば。
「扱っている危険物の内容(種類や量など)を変更する」のは企業の自由です。
ですから。
公的な機関は。
「扱っている危険物の内容(種類や量など)を変更する」のはいいですよ。
ただし。
火災予防の観点から事後報告ではなく、変更する前に報告してくださいね。
と言うことしかできません。
なので。
「扱っている危険物の内容(種類や量など)を変更する」時は。
「事前に」「変更する10日前までに」「届出」をする必要があります。
また「届出先」は「市町村長等」です。
- 法的に問題がなければ、企業の生産活動には口が出せない。
- なので、危険物の内容(品名、数量または指定数量の倍数の変更)は「変更する10日前まで」に「事前」に届出をしなければならない。
- 「届出先」は「市町村長等」
ここで。
「届出先」が「市町村長等」になる
というのは分かりますか?
危険物の量を増やす=火災発生のリスクが高くなる
だからと言って。
「消防署関係者」ではありません。
これは、「仮使用」の時と同じ考え方です。
種類や量の変更等があったとしても、基準を満たしている建物(製造所等)内のことなので、想定外の火災にはならないはずです。
また、「消防署関係者」の消火活動に影響するものではありません。
なので「届出先」は「市町村長等」になります。
ここで注目すべきは。
「危険物の量」についてです。
事案では「指定数量の倍数の変更」とあります。
この指定数量の倍数とは何でしょうか?
このことについてお話をしていきましょう。
指定数量の倍数とは
指定数量の倍数についてご存じでしょうか?
知らないという方。
知っているという方。
どちらの方も一緒に考えていきましょう。
危険物乙4の試験では絶対に覚えておかなければならない知識なので。
「危険物の指定数量の倍数」という言葉は
- 「危険物の指定数量」
と - 「倍数」
に分けられます。
言葉の意味から考えると。
指定数量という「ある量」に対して「何倍になっているか?」
を考えています。
もっと端的に言うと。
その危険物を扱うのに危険な量かどうかを判断するための指標
ということができます。
- 危険物の指定数量の倍数とは
「ある量」(指定数量)の「何倍になっているか?」
を考えている - 危険物を扱うのに危険な量かどうかを判断するための指標
「危険物の量」と言っても。
その量は、扱うのに危険な量かどうか?
何か基準がないと分からないですよね?
その基準となるのが。
指定数量になります。
- 「指定数量」は危険物を扱うときに危険な量かを判断するための
基準の量
指定数量とは
それでは次に、指定数量についてお話しましょう。
まず。
指定数量とは何か?
ということですが。
具体例で見ていきましょう。
(拙著「2番目にみる危険物乙4講座 法令五七調ゴロ合わせ」に収録されているページの一部になります)
この図の上にある品名と〇〇ℓが指定数量になります。
まず、危険物は大きく第1類から第6類の6つに分類されます。

このうち第4類に分類される危険物。
これが危険物乙4の試験の対象となる危険物になります。
この第4類の危険物はさらに大きく7種類の品名に分類されます。

この7種類の品名は順番も大切になるので、しっかり覚えましょう。
特に「アルコール類」は。
「第1石油類」と「第2石油類」の間にあることに注意です。
イメージとしては。
本棚に置いているマンガなど。
1巻から4巻まで並んでいるところに。
なぜか1巻と2巻の間に別の本が入っているイメージです。
- 第4類の危険物は7種類の品目に分類されている
- 「アルコール類」は「第1石油類」と「第2石油類」の間にある
さて。
第4類の品名の順番は覚えられたと思います。
次に考えることは。
それぞれの品名には。
- 水に溶ける「水溶性」
- 水に溶けない「非水溶性」
に分けられるということです。
ただし。
すべての品名が「水溶性」と「非水溶性」に分かれるのではありません。
品名によっては。
- 「水溶性」だけのもの
- 「非水溶性」だけのもの
があります。
どの品目がそうかと言うと。
こうなります。

「アルコール類」は「水溶性のみ」です。
なんとなく。
料理等で使うお酒(アルコール)をイメージすれば覚えやすいでしょう。
(料理につかうお酒は、鍋にいれると溶けて混ざりますからね。)
一方で。
「第4石油類」と「動植物油」は「非水溶性のみ」となります。
「第4石油類」はギアー油やモーター油など「機械に関する油」です。
こちらも機械にさした油が雨で流れないというイメージから「非水溶性のみ」と覚えることができると思います。
「動植物油」については。
ナタネ油やオリーブ油など。
「動物や植物由来の油」になります。
こちらも料理をイメージすると。
先ほどのお酒と違い、水と混ざらないですよね?
そこから、「動植物油類」=「非水溶性のみ」と覚えることができると思います。
- さらに品名は「非水溶性」と「水溶性」に分類される
- 「アルコール類」は「水溶性のみ」
- 「第4石油類」と「動植物油類」は「非水溶性のみ」
で。
ここまでのお話が前提で。
指定数量の話に戻ります。
先ほどの本の内容ですね。
これは先ほどお話した。
「第4類の7つの品目の指定数量」をあらわしています。
ゴロ合わせは。
ゴロ合わせ指定日の 5時に怪獣あらわれる
尿瓶(しびん)持ち フロ屋へ向かうも 危機せまる
です。
「指定数量」の数字の最初の頭文字がゴロ合わせになっていて。
最後の「(危機)せまる」の「せまる」が。
「1,000」+「〇」のゴロ合わせから。
「10,000」になっています。
後は、この10,000から数が減るように、(下の数字を超えないように) 0を考えていけばOKです。
このゴロ合わせの数を。
これまでお見せした表に入れてみましょう。

こんな感じになります。
なぜ同じ数字(同じ量)ではないのか?
それは。
7つの品目は、同じ第4類の危険物であるものの。
危険性が同じではないからです。
同じ量で考えた場合。
こっちの品目の方が危険という順位があるのです。
このように。
その危険性をあらわす基準(尺度)のようなものが「指定数量」になります。
例えば。
「特殊引火物」の指定数量は50ℓ。
「動植物油類」の指定数量は10,000ℓ。
この2つを比べると。
「動植物油類」のほうが200倍、多い量になっています。
このように。
量に差が出るのは。
「動植物油類」のほうが「特殊引火物」よりも危険性が低いからなのです。
逆にいうと。
「指定数量」が少ない品目は。
それだけ「危険性が高い」ということです。
「危険性が高い」からこそ。
少ない量に制限されていると覚えればいいでしょう。
- 「指定数量」が少ないのは「危険性が高い」品目
次に考えなければならないのは。
「水溶性」の指定数量
です。
さきほどのゴロ合わせは。
「非水溶性」の指定数量をあらわしています。(「アルコール類」をのぞく)
そして。
「水溶性」の指定数量は。
この数値の2倍になります。
表にすると、こうなります。

つまり。
「水溶性」が「非水溶性」の2倍になっているということは。
「水溶性」は「非水溶性」に比べて。
危険性が低いからという理由です。
- 「水溶性」は「非水溶性」よりも危険性が低いと考える
そのため、「非水溶性」の指定数量の2倍となっている
ここで注意してほしいことが。
さきほどから「水溶性」や「非水溶性」という言葉を使っていますが。
これは
「非水溶性」だから、絶対に「水に溶けない」
とは考えてはならないということです。
ここの「非水溶性」と「水溶性」という分類は。
あくまでも。
その物質の指定数量を決めるための分類
ということを必ず覚えておいてください。
「特殊引火物」には「水溶性」という分類はありません。
しかし。
「特殊引火物」にある物質、「アセトアルデヒド」や「酸化プロピレン」。
これは水に溶ける「水溶性」です。
他にも。
「第1石油類」の「酢酸エチル」や「エチルメチルケトン」など。
分類は「非水溶性」となっていますが。
多少は水に溶けたりします。
なので。
「非水溶性」といっても。
必ず「水に溶けない」とは思わないようにしてください。
- 「非水溶性」や「水溶性」の分類は、あくまでも「指定数量」を決めるための分類
「非水溶性」でも水に溶けるものもある
これで指定数量がどんなものか分かったかと思います。
だいぶ話が脱線しましたが。
そもそもは「指定数量の倍数」についてのお話でした。
ここまでの内容が理解できれば。
「指定数量の倍数」というのは、想像できるのではないでしょうか?
そうです。
指定数量の倍数とは。
先ほどお話した指定数量。
この量に対して、何倍になっているかを考えることです。
- 「指定数量の倍数」とは、扱っている量が「指定数量の何倍になっているか?」を考えること
今回はキリがいいのでここまでにしましょう。
あらためて今回お話した内容をまとめてみます。
いかがだったでしょうか?
「届出」のお話から、「指定数量」へ話がそれてしまいましたが。
この「指定数量」は試験でよく出る大切なところです。
なので。
かならず「指定数量」の数値は覚えてください。
拙著の本のゴロ合わせを紹介しましたが。
ゴロ合わせはネットで調べると色々な覚え方があります。
ご自身が忘れないようなゴロ合わせで覚えてください。
また本の紹介になりますが。
「非水溶性」と「水溶性」のそれぞれの代表的な物質の名前を覚えるために。
ゴロ合わせを収録しています。
この一覧表の物質をゴロ合わせで覚えることができます。
また、その物質が「非水溶性」か「水溶性」かが分かれば。
試験の「危険物の性質」に出てくる「静電気を発生するか?」「導電性があるか?」ということも個別に覚えなくてすみます。
どの物質が「非水溶性」で、どの物質が「水溶性」なのか?
これを覚えておくと試験はかなり有利になります。
また、このほかにも
- 第4類の中で水より重い物質
- 保安距離と保有空地が必要な製造所等
など
試験で頻出する項目を簡単に覚えるためのゴロ合わせも収録してします。
試験で覚えなければいけないところは決まっています。
であれば。
ゴロ合わせを使って、少しでも時間を節約して覚えた方が効率はいいはずです。
また。
時間が節約できれば。
他の自分の苦手な科目にその時間をあてることができます。
限られた時間を有効に使うためにも。
拙著「2番目にみる危険物乙4講座 法令五七調ゴロ合わせ」の購入をオススメします。
次回は、最後にお話しした「指定数量の倍数」の続きと、届出の他の事案についてお話していきます。
それではまた次回。